手描き友禅と草木染め

蔵王町に移住した方

島田ひろみさん

職業

友禅作家

出身地

仙台

日本の伝統的な染めの一つ、友禅。着物に染められた繊細で艶やかな絵や柄を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。友禅には、いろいろな技法があり、図の輪郭をはっきりさせるために染料のにじみを抑える技法もあれば、水墨画のような淡いにじみを活かす手描きの技法もあります。

遠刈田に工房兼自宅を構える島田ひろみさんは、手描きの友禅作家。また草木染めも行なっています。
「自分で染めたものを、自分でミシンをかけ、形にしています」と楽しそうに笑う島田さんが制作するのは服飾雑貨。年に数回、全国のデパートや百貨店などでも展示会を行なっています。

友禅染が天職と感じる

高校生までは仙台で暮らしていた島田さん。高校卒業の頃、染色家の五十嵐忠助氏と出会い、染色の魅力を知ります。そして五十嵐氏の内弟子となるため上京。4年間染色を学び、その技術を身につけていきました。
「友禅染と出会ったのは、本当にたまたま。しかし、とても面白くて自分にあっていました。天職だと思います」。

その後、東京で呉服の友禅染の仕事を請けていましたが、時代とともに呉服の需要はだんだんと減少。そこで服飾雑貨の取り扱いも始めました。

そして、蔵王へ

2003年、島田さんは、ご両親のそばで暮らすために仙台に戻ります。地元への思いが募ったことと、さらに父が倒れたことがきっかけでした。仙台に戻ってからは、以前からの知り合いで、蔵王町で草木染めを行なっている佐藤とし子さんをきっかけに、草木染めにも挑戦。蔵王町の円田に工房を借りて、草木染めにも挑戦。仙台と蔵王を行き来する生活を経て、今の工房である空き家と出会います。

「若い頃から自然が好きで、もっと自然が近いところで暮らせないかなと遠刈田を訪れた時に、たまたまこの空き家があって。内覧すると作業場にぴったりの広さがあったので、即決しました」。
そして、2017年の1月、母を呼びよせ、遠刈田に定住しました。

手描き友禅を、ここで、もう一回り広げていきたい

島田さんは遠刈田に来てから、誘われて山歩きのグループに参加。登山は大変だけれど、落ちている木の実を見つけたり、ささやかに咲く植物に気づいたりしていると、気持ちが豊かになるそうです。雪の日はとても静かで、心が落ち着くそう。犬と散歩に出れば、自然の中に色を探します。そのように、仕事と生活の両面から四季を感じられる暮らしをしています。

「蔵王町にはいろいろと染められるものがあります。同じ草木で染めても、色を定着させる媒染の種類によって、発色が変わるのですね。この一年は頑張って、りんごの枝、ふきのとう、タンポポなど、いろいろな草木や媒染で、染めを試しました。実は、東京でカメラアシスタントをしている娘が、一緒にやってくれそうなんです。今67歳ですが、娘と一緒にやることで草木染めと手描き友禅をもう一回り広げられればと思って、この一年、頑張っていろいろと試したのです」

島田さんの仕事は遠刈田での暮らしとバッチリ噛み合っています。蔵王の自然の魅力を確かな技術で代弁するかのような、とても優しい風合いの服や雑貨。その表現が親子で広がっていくことが楽しみですね。