蔵王を遊びまわる
蔵王町に住んでいる方
遠藤 裕一さん
職業
喫茶店店主(純喫茶えんそう)
蔵王の麓、遠刈田温泉のメインストリートにある「コーヒー&レストラン えんそう」。1961年にオープンした老舗の喫茶店です。えんそうのマスター遠藤裕一さんは、昭和23年生まれ。遠刈田生まれの遠刈田育ち。中学校と高校は仙台で下宿暮らしでしたが、卒業後は生まれた遠刈田でずっと暮らしています。
「大学へ進学をするつもりだったのですが、うちの親に、美味いものをたくさん食わされてね。食い物につられて実家に戻ったのです。実家に戻って食べさせてもらったのは一年ぐらいだけ。『あとは、働け』と」。
遠藤家はもともと、今喫茶店がある場所で食料品店を営んでおり、その二階には観光客が軽食を楽しめる喫茶店も併設していました。そこで遠藤さんは喫茶店を引き継ぐことに。しかし彼がのめり込んだのは、喫茶店ではなく、スキー。蔵王山には良質な雪に恵まれた澄川スキー場があり、遠刈田温泉は、まさに蔵王山の入り口のまち。遠藤さんはスキーの指導員の資格を取得し、スキークラブを設立。スキー技術を体系的に分析、システム化し、全国スキー学校大会で発表するなど、スキー学校のインストラクターとして活躍します。
そして、27歳の時に結婚。それを機に喫茶店にも本腰を入れ始めました。その三年後のえぼしスキー場ができた年に食料品店の看板は下ろし、喫茶店一本にしたそう。コーヒーやレストランメニューには、蔵王の美味しい水や、蔵王の食材を使って、訪れる人におもてなし。また蔵王の情報を発信。この場所で50年以上、蔵王の魅力を伝えています。
「ここのことなら、なんでも相談してほしい。いろんな遊び方があるから。ずーっと蔵王で遊びまわっているけれど、まだまだ足んない! 人との繋がりも楽しい」と、ハツラツに遠藤さん。
蔵王への移住は、生活のことをしっかり考えてから
「イベントも年間を通していろいろとあるので、移住して来た人たちと一緒に楽しんでいます」と遠藤さん。
イベントだけではなく四季それぞれに、心がワクワクするそうです。春は新緑が眩しい。6月には高山植物が咲きます。夏は、山に登ると涼しく清々しい。秋は紅葉。夜になると満天の星空。冬もスキーやスノーボードだけじゃなく、スノーシューを履いてのトレッキングも面白い。冬の雪かきも大変ですが、そこは考え方次第だそう。「汗をかいて楽しんじゃえ」と笑います。
蔵王町には、ここで自分に合うペースやライフスタイルを見つけて移住してきた、いろんな人がいます。「移住してきた方々は素晴らしい才能や頭脳、それに知識の持ち主です。蔵王で活かしてほしい」と、遠藤さんは、蔵王がより面白くなることを期待しています。
「ここから仙台へ通勤している人もいますよ。高速バスもあるので、仙台は遠すぎることはありません。しかし、移住するなら、やはりじっくりと考えてから。ここでの仕事は少ないです。生活のことを考えて、自分に合うペースをここで見つけられたら、一緒に遊びましょう。
高速バスで仙台までおよそ1時間。通勤としては、遠すぎない時間です。仕事はそのままに、蔵王町に移住にもリアリティがありますね。
遠藤さんは、「蔵王のことなら、なんでも気軽に相談してください」と頼もしい。「そして、ここに来たら、やっぱり頼れる場所がないと不安だと思うんです。だから、何かあったら、声をかけてくれたらいい、そう思います」。
蔵王の遊び方を提案したい!
遠藤さんは、ここ10年は山歩きに没頭しているそうです。蔵王山は古くから修験者の修行の場で山岳信仰の山でもありました。遠刈田温泉には刈田嶺神社里宮が、山頂には刈田嶺神社奥宮があります。神体である蔵王権現は、冬季は里宮に、夏季(エコーライン開通から9月第4日曜日)は奥宮に、祀られています。江戸時代には庶民にも御山詣りが広がりました。その御山詣りでの古道を、遠藤さんを中心とした蔵王古道の会が4年前に復活させました。山岳会の先生たちの記憶を教えてもらいつつ毎週火曜日に山に入ったそうです。今は、古道をたどるイベントも開いています。
「年間を通して蔵王くらい面白いところはないと思っています。私は蔵王の遊び方を提案したいし、実践したい。そうして、これからも蔵王を好きな人と関わって行きたいです」