蔵王町のギター職人

蔵王町に移住した方

南部 暁生さん

職業

ギター職人(NAMBUギター工房tupli)

出身地

東京都生まれ千葉県育ち

田園が広がる蔵王町の東。小村崎の穏やかな里山に「NAMBUギター工房tupli」はあります。「木工をするために広い場所を探していました。偶然、蔵王町の今の物件をウェブで見つけたんです」と、ギター職人の南部暁生さん。ゆったりとした小村崎の景色が広がる窓の前で、ギターを作っています。

南部さんは東京都足立区生まれ、千葉県育ち。東北大学卒業後、大学院へと進みました。
「大学院へ進むことが決まっていたので、就職活動をしていないのですね。でも周りの仲間たちは、社会へと出て行く。その姿を見て、自分が本当にやりたいことを真剣に考えました」。
その頃はギターに夢中だった南部さん。子どものときから工作も好きだったことから、「ギターづくりが良さそうだ」と、大学院を中退。東京のギターエンジニアスクールでギターづくりを学び、福岡のギター製造会社に就職します。

自分の「ものづくり」を探して、偶然、蔵王町へ

南部さんが就職したギター製造会社でのギターづくりは分業制で、携わるのは工程の一部。それは、自分の思うものづくりとは少し違ったそうです。「ものを作ることの自分の価値観として、初めから終わりまで関わりたかった」と、5年半勤めたのち、独立を決意。そして、今の空き家物件と出会いました。
福岡からの移住でしたが、「何よりも、ワクワク感の方が強かったですね」と南部さん。大学は宮城だったこともあり、知らない土地への不安はなかったそう。

今、ギター工房は、興味を持って見学に来る方、オリジナルの一本を求める方が訪れ、また、大切なギターの修理の依頼も入ります。最初は「この地域に新鮮に見られていた」ギター工房は、すでに景色に馴染んでいます。工房の前にある家庭菜園は、ご近所さんが耕してくれたそう。別のご近所さんは、耕された畑に気づき、余っている苗を持って来てくれたとか。
「ご近所さんとは、日常的に、地域の草刈りなどで関わりはできます。また、よそから来た私を地域に引き込んでくれています。飲み会に誘ってくれたりもします。蔵王の人たちは、人が良く、お節介な優しさを感じています」とやわらく笑顔で話してくれました。

自分の変化と、可能性が広がる環境

蔵王に来てから、南部さんは、結婚し、子どももできました。家族ができて、都会で暮らしていた時と時間の過ごし方や趣味が変化したと言います。自分の生活のテンポも緩やかになっているそう。
「自然が周りにあると、可能性が広がるように思います。暮らし方や遊び方に型がありません。子どもと虫を採ること。キャンプすること。段差があれば、自分でステップも作ります。やり方がわからないから無理、店に売っていないから無理、という発想にならない。生活の発想や可能性が広がります」。
今は、木工だけではなく、「溶接も面白そうだ、家にももっと手を入れたい」と、これからの可能性の広がりに、ワクワクしています。